ゾーニングすることで、子どもや初心者から
競技志向のプロスケートボーダーまで幅広く
富山駅の北側、親水広場にある〈NiX Urban Skate Park〉。昨年8月にオープンしたばかりとあって、まだ真新しいきれいなパークで、だれもが気軽にスケートボードを楽しむことができます。都市の景観を取り⼊れ、まちとスポーツの融合を表現する場所として誕生しました。
手がけるのは、富山市内に拠点を構え、社会インフラ整備をはじめとした建設コンサルタント業を営む〈NiX JAPAN株式会社〉。これまでにも同市内の〈NiXストリートスポーツパーク〉や〈村上市スケートパーク(新潟県村上市)〉、国内最大級の〈有明アーバンスポーツパーク(東京都江東)〉といった数々のストリートスポーツ施設の実績があります。ここで特筆すべきは、NiX Urban Skate Parkは完全なる自己資金での建設であるということ。
設計監修のアドバイザーを務めるのは、富山市出身のプロスケートボーダーであり、2020年東京オリンピックの銅メダリストの中山楓奈さん。現在は高校生で、学校に行く前や帰りにはよくここで滑っています。オリンピアンと同じ空間でスケートボードを楽しめるというのもなかなか貴重な環境です。
NiX JAPAN代表の市森友明さんによれば、「ここで滑っていると通りから見えるので、フェンス越しに声をかけられることも多いみたいですね。中山選手自身はそうやって応援してくれる人の声がダイレクトに感じられるので、練習していてもすごく楽しい、やりがいがあると以前コメントしてくれました。我々にとってもうれしい言葉でしたね」
パークのエリアは気軽にスケートボードを楽しめる「初級・中級者エリア」、競技志向の人にも対応できるセクションを設けた「上級者エリア」の2つにわかれており、中山選手が監修したエリアは後者にあたります。
「国内外に遠征した際、自分が楽しいと思ったようなセクションが欲しくて、アドバイザリー会議ではたくさん意見を聞いていただきました。路面もよくて初心者の方から上級の方まで楽しめるパークになったと思います。富山駅からアクセスのいい場所なので是非たくさんの人に来てほしいです」という中山さん。
同社の設計担当エンジニアの大西太和さんは、学生時代からスケートボードが趣味でずっと続けているとあって、この施設や現在の仕事には特別な思い入れがあるといいます。
「中山選手のようなオリンピック選手がこのパークから生まれてほしいという願いはもちろんあるんですけど、競技者にとっても納得のいく練習ができる環境で、かつ小さなお子さんや初めたばかりの人たちがスケートボードを好きになってもらえるように、という思いも込めています。そのためにはきちんとゾーニングする必要があって、利用する方のレベルに合わせた動線を考えて、双方にとって居心地が良くなるような環境を考えて設計しています。思い描いていたようなかたちで使っていただけているので、設計した立場としても良かったなと思っています」(大西さん)
ひとつの場所に異なるレベルや年齢の人たちが共存し空間を共有できるというのは、スケートボードというスポーツの特性であり、スケートボーダーならではのコミュニティに対する“マインド”も大きく影響しているようです。