まちなかに溶け込むパークをつくることで
スケートボーダーの地位向上を目指す
これから注目したいと考えているのが、ストリートカルチャーとまちづくりの関係性といいます。市森さん自身も訪れたことがあるというアイスランドのレイキャビクでは、そのヒントを見つけました。
「レイキャビクのまちなかにあるスケートパークは、セクションをちょっと置いただけみたいなところだったんだけど、まちにいる人たちと完全に馴染んでいるというか、まちにひらかれている感じがとても心地良かったんです。スケートボードを楽しんでいる人たちの横にはオープンカフェのようなものがあって、そこではおじいさんやおばあさんがゆったりとお茶してるといった感じで」(市森さん)
まちづくりの視点でスケートボードを捉えようとしたとき、こんな例があります。フランスのボルドーではスケートフレンドリーなまちづくりを目指していて、ストリートにおけるスケートボードの禁止区域と解禁区域を看板で示し、エリアを分けしたことによってまちのスケートボーダーたちが秩序を守るようになったのだとか。
前提として、路上におけるスケートボードの滑走は迷惑行為に該当することから禁止されていますが、一方でまちなかのスケートボーダーにとっては花壇の縁石やベンチ、階段の角は格好の遊び場となってしまう現状もあります。
ボルドーの場合、スケートボード解禁区域内にある構造物の一部を大理石や鉄のアングルなどで強化するというハード面へのアプローチによって、ストリートにおけるスケートボーダーとの共存を図りました。スケートボーダーによる器物破損や事故はヨーロッパにおいても大きな社会問題であることから、先進的な対策の一例であるといえます。
こういった問題は、日本はもちろん富山市も例外ではありません。今はまちなかに「スケボー禁止」の看板が乱立していますが、NiX Urban Skate Parkができてからはまちなかを滑走するスケートボーダーは激減しました。こういったケースは珍しいそうですが、社会問題の課題解決という意味も含めて、まちなかにスケートパークをつくったという経緯もあります。
「我々はやはり、スポーツでまちづくりに貢献したい。当然ながらマナーを守ることは大前提です。まちなかにつくったのは、まちを歩いている人の目にふれるようにすることで、スケートボードへのポジティブな理解が生まれてほしいという狙いがありました。いずれは『スケボー禁止』の看板がなくなることが、ある意味では最終的なゴールであり、新しいランドスケープなのではないかと思っています。スケートボードがこのまちの魅力のひとつになったらいいと考えています」(市森さん)
credit text:井上春香 photo:日野敦友