あるとき急に訪れた人生の転機
ジュエリーデザイナーから漫画家へ
高岡市在住の漫画家、nifuniさん。デビュー作であり代表作はシリーズ累計308万部(2023年末時点)の『左ききのエレン』。絵を描くことを軸にだれかの役に立てる仕事がしたいと、漫画家という肩書きを超えてイラストレーターとしても幅広く活動しています。さらには2023年8月、自宅1階をリノベーションし、夫婦で経営するブックカフェ〈松キ〉をオープン。創作や制作の仕事をしながら、まちにひらかれた新しい場をつくりました。
大阪で生まれ、幼少期は千葉県市川市で過ごし、中学2年生の頃に家族で富山に移住。高校卒業後は高岡短期大学(現・富山大学芸術文化学部)で金属工芸を学び、卒業後はジュエリーデザイナーとして働いていましたが、その後、思いがけないかたちで漫画家としてデビューすることになります。
「漫画は小さい頃から好きで興味はあったけど、ずっとチャレンジするタイミングがなかったんです。当時、ジュエリーの仕事をしていたときは現場も人も好きでしたし、キャリアも長くなってきていたのでやりがいはありましたけど、マネジメント側になってなんとなく悶々としていた時期でもありました。
そんなときにちょうど『左ききのエレン』の原作者であるかっぴーさんが、別の漫画の作画担当を募集していたんです。全然経験ないけどやってみようかなと思って応募してみたら、最終選考まで残ったんですね。選ばれたのは別の方だったんですけど、それがご縁でリメイク版の企画で声をかけていただいたんです」
幼い頃の夢でもあった漫画家や絵を描くという仕事。原作のファンでもあり、作者を応援したいという気持ちもありました。目の前に現れたこのチャンスを逃すわけにはいきません。とはいうものの、もちろん片手間でできることではないため、nifuniさんは大きな決断をします。
「漫画家でやっていくならと、思い切って会社を辞めました。急なことで職場の人たちはたいへんだったと思うんですけど、ありがたいことに今でも応援してくれています。富山に引っ越したことや大学で工芸を専攻したこともそうなんですけど、初めてのことや環境が変わることに対しては、不安よりも先に楽しそうって思っちゃう性格みたいです。
予想外の展開のほうがおもしろいっていうか。漫画だって、この先こんなことないだろうからやってみよう! みたいな」
フリーランスとして活動を開始するとともに、2017年10月に『少年ジャンプ+』での連載がスタート。2022年10月で完結し、丸5年で全24巻を刊行しました。締め切りに追われる日々の苦労は多かったものの、達成感とやりがいはとても大きく充実していたと話すnifuniさん。連載終了後の落ち着いたタイミングで、かねてから考えていたブックカフェのオープンに向けて準備を始めました。