山のイラスト
〈民宿あおまさ〉の目の前の海の夕景
lifestyle, well-being

未来を見据えて富山県内でつながる。
能登半島地震からの復興を願う支援の輪 | Page 2

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まちへの恩返しを込めて。
氷見で約50年、三代で築いてきた〈民宿あおまさ〉

氷見市の松田江浜の絶景に面した〈民宿あおまさ〉を営む女将・青木栄美子さんは、能登半島地震が起きたとき、海から1キロほど離れた自宅にいた家族(夫と生後2ヶ月の乳児)と、市内の高台まで車を走らせて一晩を過ごしたといいます。

〈民宿あおまさ〉の女将・青木栄美子さん
現在フリーアナウンサーの顔を持ちながら、〈民宿あおまさ〉の女将として、氷見の魅力を発信している青木栄美子さん。

「避難中は自宅や宿がどんな状態になっているか不安な気持ちでいっぱいで。幸い大きな被害はありませんでしたが、倒壊した家屋や地割れなど、痛々しい地震の爪痕がまちのあちこちに残り、震災直後は市内の広い範囲で断水となり、お風呂やトイレなども使用できませんでした」(栄美子さん)

サウナも設置された〈民宿あおまさ〉の外観
富山湾を眺めながら楽しめる前面展望のプライベートサウナも併設し、海直結のロケーションでサウナと温泉を楽しめる〈民宿あおまさ〉。

〈民宿あおまさ〉では、偶然飲用許可を得ている安全な地下水がタンクに貯水してあり、使用することができました。そこで、避難した時の自分たちと同じように、被災して食べ物がなく不安な気持ちで過ごしている人がいるのではないかと考え、宿を解放してお米がなくなるまで炊き出しをすることに。

さらに温泉入浴を無料解放し、1月2日から6日にかけて氷見市内や石川県の七尾や穴水などから450人以上の被災した方が〈民宿あおまさ〉を訪れました。

用意されたおにぎりを食べる女の子
「地震が起きてから初めてのごはんでした!」「5日ぶりのお風呂をありがとう」と涙を流して感謝の言葉を伝えてくださったのがとても印象に残っています。

〈民宿あおまさ〉は、1972年に栄美子さんの祖父が創業。氷見で50年以上続く民宿として親しまれ、“あおまさの娘さん”と呼ばれながら、地元の人やお客さんたちにも、かわいがってもらいながら、この地で育ったという栄美子さん。

だからこそ、いま自分たちにできることで、少しずつ地域に恩返しをしたいという思いが大きいといいます。しかし、数年前のコロナ禍の時期は、経営状況が落ち込み、後継者もいないことから、家族で宿をたたむことも考えていたと当時を振り返ります。

ぶりを手にする辻井隆雄さんと、青木栄美子さん、スタッフの方々
〈民宿あおまさ〉を今後どうしていくべきか悩んでいましたが、夫である辻井隆雄さん(写真中央)との結婚をきっかけに、夫婦での事業承継を決意。

「アナウンサーの仕事もしていて、やりがいもあり、民宿での仕事と両立するのは難しく、自分が一人で継ぐのは無理だろうなと考えていました。そんななか結婚が決まり、悩んでいることを知った隆雄さんが一緒にやってみようと後押ししてくれて。仕事で苦楽を共にするのも、2人であれば頑張れそうだなと思えたんです」(栄美子さん)

氷見で生まれ育った栄美子さんは、このまちを一言で表すとしたら「海と魚のまち」だといいます。定置網漁で水揚げされた魚は鮮度が抜群。

そんな朝獲れのおいしい魚を日常で気軽に食べることができるのが、氷見に住んでいて、幸せだと感じられる要素のひとつだそう。海沿いを歩けば、潮の香りに波の音。魚屋を覗くと、きらきらした新鮮な魚たちが並んでいます。

ブリをメインとした舟盛り

「漁業が盛んで、冬はブリがおいしい。もちろん、ブリ以外の魚も豊富で、春はサヨリやイワシ。夏は岩がき、秋はノドグロ。こうした四季折々の海鮮が楽しめるのは、栄養豊富な富山湾ならではの魅力です」(栄美子さん)

今後も〈民宿あおまさ〉では、ポジティブに氷見の魅力を発信していくこと、そして地震の二次的な被害から宿や地域を主体的に守ること。この2つを大切にしながら継続的に取り組んでいきます。

目の前は砂浜の〈民宿あおまさ〉の露天風呂

「これまで炊き出しやチャリティーイベントなど、地域のために宿としてできることを精一杯やってきました。観光客は減少し、〈民宿あおまさ〉でも地震直後の宿泊予約は、8割がキャンセルになってしまい、厳しい状況ではありました。

しかし、自分が元気じゃないと人を助けることはできません。これまで通り〈民宿あおまさ〉を営業して、必要な情報を発信しながら、震災前のように、活気のある宿になるよう、取り組んでいけたら。私たちも被災者ではありますが、無理のない範囲で今こそできることを続けていきたいと思っています」(栄美子さん)

〈民宿あおまさ〉前の海の夕景
〈民宿あおまさ〉の目の前に広がる、晴れた日には海越しに立山連峰まで臨めるオーシャンビュー。「今年3月から、これまで金沢が終点だった北陸新幹線が福井県敦賀市までつながり、さらにアクセスもよくなります。人とのご縁がいろいろなかたち広がり、氷見がさらに楽しいまちになったらいいなと思います」
Information
民宿あおまさ
address:富山県氷見市窪3203-1
tel:0766-91-5157
定休日:不定休
Web:民宿あおまさ

海から里山まで広がる雄大な自然、多彩な食の恵みを味わうことができる氷見。みずからも被災者となりながら、震災を経験したいまこそ、自分たちにできることを懸命に取り組む。その支援の輪は少しずつ着実に広がっています。

氷見の風土が醸すワイン造りを。
ワイナリー〈セイズファーム〉

氷見市で江戸時代から続く老舗魚商〈釣屋魚問屋〉が母体のワイナリー〈SAYSFARM(セイズファーム)〉。ドメーヌとして100%自社原料のみの葡萄で、この土地でしかできないワイン造りを行っています。

一本の瓶に、海から丘に吹く心地よい風や、北陸のやさしい陽の光、深々と畑に降り積もる雪も、みんな一緒に詰め込んだ氷見の風土が醸すワイン。ごくシンプルな理念のもと「北陸が生む美しいワイン造り」を日々目指しています。

〈セイズファーム〉の畑から見下ろした富山湾
2007年にオープンした、富山湾と海越しの立山連峰をのぞむ、氷見の小さな丘の上に位置するワイナリー。

「能登半島全域や支援が必要な地域が多くあり、〈セイズファーム〉としても、まずは自分たちが暮らすまちの一日も早い平穏と復興を願うこと、そして事業を継続すること、ここで働くスタッフの暮らしを守ることが最優先である」という想いから、2024年に店頭での販売を予定していたワインを、氷見市ふるさと納税の返礼品として出品。

〈セイズファーム〉ワインセット
〈セイズファーム〉ワインセット(復興支援オリジナルエコバッグ付)。「少しでも氷見復興の財源になり、ご支援をいただく方の気持ちや笑顔を通して、氷見にエールを送っていただけることが、なによりの励みや支援になると考えました」

今回の売上金の一部は、「同じ能登半島で、食に携わる者として、ワイナリーとしてできることをしていきたい」という思いから、石川県の七尾や輪島などで、自分たちが被災しながらも現地で懸命に炊き出しなどの取り組みをされている「北陸チャリティーレストラン」のシェフの皆さんの今後の活動や、お店の再建のための資金として寄付。

白地に赤文字で「HOPE」と書かれたエコバッグ
氷見漁港の近くで、シルクスクリーン印刷の体験やオリジナルTシャツなどの製造、販売を行っている「FCTRY(ファクトリー)」と共同で復興の願いを込めて製作したエコバッグも同梱。氷見での日常を取り戻し、みんなで助け合いながら、取り組んでいきたいという思いが込められている。
Information
SAYSFARM
SAYSFARM チャリティーセット
シードル1本(750ml)、アップルジュース、エコバックセット(寄付金額:24000円)
SAYSFARM ワインセット
ワイン3本(750ml)、アップルジュース、エコバックセット(寄付金額:61000円)
address:富山県氷見市余川字北山238
tel:0766-72-8288
Web:SAYSFARM
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