山のイラスト
〈三郎丸蒸留所〉の樽貯蔵庫
lifestyle, well-being

未来を見据えて富山県内でつながる。
能登半島地震からの復興を願う支援の輪 | Page 3

news&columns|ニュース&コラム

八尾町の老舗酒造〈玉旭酒造〉が届ける、
富山産にこだわった丹精込めた1本を

富山市の南西部、「越中八尾おわら風の盆」で知られる八尾町。昔ながらの情緒が色濃く残るまちで、1808年の創業から210年以上、県内有数の老舗酒造場として、北アルプス立山連峰の恵みである軟水地下水を使い、すべて富山県産米を採用し、こだわりある酒造りを続けてきた〈玉旭酒造〉。

〈玉旭酒造〉の外観
富山県産の酒造りにこだわり、決して大量生産はせず、1本1本真心を込めて、直接お客様に手渡しできるような酒蔵を目指している。

玉旭酒造にとって能登は深いつながりがあり、酒造りにおいても忘れてはいけない存在だといいます。先代まで能登杜氏組合所属の杜氏、蔵人により酒造りを行ってきました。そして、現在13代目当主を務める玉生貴嗣(たもうたかつぐ)さんも、能登杜氏のもとで酒造りを学んできたのだそう。

復興支援酒「能登半島地震復興支援大吟醸」のボトル
「富山県内でも地震により甚大な被害を受けた酒蔵が多くあり、そんな人たちが一日も早く日常を取り戻し、またおいしいお酒が造れるように微力ながら支援をしていきたい」という思いから、1月18日から復興支援酒「能登半島地震復興支援大吟醸」を発売。

「厳冬期は日本酒造り最盛期。本来ならば活気に満ち溢れていたであろう酒蔵が復旧作業に追われ、酒造りを中断せざるを得ない状況に心が痛みますが、微力ながらこの地で培ってきた酒造りを通して、支援を行っていけたらと思っています」(玉生さん)

復興支援酒のラベルに「#がんばろう北陸」の文字と支援金寄付先が書かれている
北は北海道から南は奄美大島まで全国各地からの注文があり、販売からわずか4日で694本が完売。商品の売上の全額(消費税・酒税を含む)を石川県と富山県の酒造組合支援金として寄付。
Information
玉旭酒造
address:富山県富山市八尾町東町2111
tel:076-455-1331
営業時間:9:00〜19:00
Web:玉旭酒造

伝統を継承し、革新的な取り組みも。
〈三郎丸蒸留所〉のウイスキー造り

〈三郎丸蒸留所〉の看板

北陸で最古のウイスキー蒸留所〈三郎丸蒸留所〉を運営する、砺波市の〈若鶴酒造〉。2017年の大規模改修により、新たなスタートを切った〈三郎丸蒸留所〉では、伝統を継承しながら、数々の革新的な取り組みに挑戦しています。

「シングルカスク三郎丸 能登チャリティーボトル」
2024年1月22日に販売した「シングルカスク三郎丸 能登チャリティーボトル」は即日完売。〈三郎丸蒸留所〉のシングルモルトウイスキーひと樽をチャリティーボトルとしてボトリングし、消費税と資材費を除いた売上全額を寄付。
チャリティーボトルのラベル
チャリティーボトルのラベルイラストは、能登のシンボル・見附島。「島の形は変わっても私たちの心の中にあるのは、あの『軍艦島』。昔のままのあの島と昇る朝日に復興の思いを込めました」

2019年からは、高岡市の伝統産業である高岡銅器の技術を活かして世界初の鋳造製蒸留器「ZEMON(ゼモン)」で蒸留した原酒の商品化など、地元の産業振興に寄与する取り組みにも力を入れています。

〈三郎丸蒸留所〉の樽貯蔵庫
庄川の豊かな水や富山県産のミズナラ材を用いた樽など、県内の豊かな自然から恩恵を受け、富山でウイスキーをつくることの意味を考えることが、根幹にある。

「〈三郎丸蒸留所〉もこれまで決して平坦な道を歩んできたわけではありませんが、地震の影響で今期の酒造りを断念せざるを得ない仲間たちもいる。そのような状況のなかで、70年以上もウイスキー事業を続けられたのも人々の支えがあったからこそ」とウイスキーでお返しをしたいという思いが強くあるそう。

「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール」の350ml缶
チャリティーボトルでの寄付に加え、2024年3月31日まで「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール」の売上の一部を石川県に寄付。「北陸の魅力を世界に発信し続けることで、少しでも地域への応援、恩返しができたらと思っています」
Information
若鶴酒造
address:富山県砺波市三郎丸208
Web:若鶴酒造 三郎丸

日常で段ボールを活用し防災意識も高める
段ボール製造会社〈サクラパックス〉

〈サクラパックス〉の倉庫内

富山市の段ボール製造会社〈サクラパックス〉では、段ボール製のベッドやパーティション
などを製造し、氷見市や石川の避難所に無償で提供を行いました。1月5日から支援を開始し、約1200個のベッドを届けています。

段ボールベッドに人が寝ている、使用時のイメージカット
組み立て式の段ボールベッドは幅185センチ、奥行き90センチ、高さ41センチ。テープを使用する必要はなく、500キロ(段ボール1箱あたり)の重さまで耐えることができる。

2011年の東日本大震災をきっかけに、段ボールを活用した防災関連商品の開発、県民の防災意識を高めるワークショップの開催にも積極的に取り組んできました。

Webサイト『段ボールでまもろう』のトップ画面
2022年に開設したWebサイト『段ボールでまもろう』。

災害発生時の避難所では、まずは命をつなぐことが優先されますが、衣食住の供給が安定してからは、メンタルヘルスのケアも大切になります。

「段ボールでの簡易テーブルの作り方」など災害時の活用方法メニューページ

『段ボールでまもろう』のWebサイトやSNSでは、物資が運び込まれた後に出る不要な段ボールなどを使って、簡単に工作できるアイテムを開発し、その作り方など、役立つ情報をお届けしています。

避難所や自宅で手に入りやすい段ボールでつくれる、避難生活アイテムの紹介や、防災に関する豆知識など、日々発信しているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

Information
サクラパックス
address:富山県富山市高木3000(本社)
tel:076-436-6191(本社)
Web:サクラパックス 段ボールでまもろう
X:@mamorou_bousai

能登半島地震によって被災しながらも、自分たちのまちの魅力を発信する宿泊施設、富山の風土を生かした酒造りを続ける酒蔵やワイナリー、防災に関する役立つ情報を届ける地元企業……、さまざまな立場から、この先の未来を見据えて、富山県内でも着実に広がっている支援の輪。

今年3月には、北陸新幹線が福井県の敦賀まで延伸され、北陸3県へのアクセスもより便利に。北陸を、能登を、富山を元気に。『doors TOYAMA』では一日も早い復興を願って、今こそ富山の多彩な魅力を日々発信していきます。

credit text:『doors TOYAMA』編集部

この記事をポスト&シェアする