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内川の対岸から見た〈8ablish TOYAMA〉の外観
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射水市・内川沿いに佇むヴィーガンカフェ
〈8ablish TOYAMA〉が考える「食と農」

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まちの「ランドスケープ」をつくるカフェ

富山県射水市の中央を流れる「内川」は、ここ数年で空き物件をリノベーションした多くのお店がオープンし、注目されているエリアです。その内川沿いに、2024年3月に移転オープンした〈8ablish TOYAMA〉。まず、目をひくのが建物の外観。目の前の川に停まっている漁船の色からイメージを抽出したという淡いパステルグリーンの壁が、内川の雰囲気や景観に調和しながら溶け込んでいます。その一方で、瓦屋根とのコントラストが実にユニーク。

店の入口に立つ川村明子さんと加治幸大さん
〈8ablish〉代表・クリエイティブディレクターの川村明子(かわむら・あきこ)さん(右)と〈北陸ポートサービス〉代表の加治幸大(かじ・ゆきひろ)さん(左)。

8ablish(エイタブリッシュ)は、クリエイティブ・ディレクターの川村明子さんが2000年に東京・南青山にオープンした〈カフェエイト〉を前身とするヴィーガンカフェの草分け的存在。ヴィーガンとは、菜食主義者のなかでも、卵や乳製品含め動物性食品を一切食べないこと。「Universal Preasure for Everyone(愉しみをすべての人に)」をコンセプトに、カフェやビストロ、パーラーといったさまざまなかたちで、ヴィーガンのスタイルを伝え続けています。

現在は、東京・麻布台ヒルズ店と富山のファクトリーショップの2店舗のみ。富山店は、豊富な海の幸が揃う〈新湊きっときと市場〉内のヴィーガンカフェとして3年前にスタートし、看板商品の「ヴィーガンアイスクリーム」は、オンラインストアでも販売していることから全国的な人気を集め、アイスクリームの製造拠点としての役割も担ってきました。その後、内川沿いに移転オープンしました。

〈8ablish TOYAMA〉の店内
リノベーションをした店内には川村さんの絵や写真家の作品が飾られている。アイスクリームやマフィンはイートインも可能。そのほかオリジナルロゴのグッズなども販売。
写真家の作品が飾られたコーナー

そもそもなぜ、東京が拠点のエイタブリッシュが富山に店舗を構えることになったのでしょうか。その理由は、エイタブリッシュの川村さんと射水市を拠点に事業を行う〈北陸ポートサービス〉の加治幸大さんとの出会いにありました。

ショーケースに並ぶオリジナルヴィーガンアイスクリーム
富山の自社工場で製造しているオリジナルヴィーガンアイスクリームは、乳製品不使用で有機豆乳をベースに厳選した自然素材を使用(シングル660円〜)。
お店に並ぶヴィーガンマフィン
アイスクリーム同様、エイタブリッシュの看板メニューでもあるグルテンフリーのヴィーガンマフィン(486円〜)。

「加治さんとの出会いは、パッケージデザインの相談をしてもらったのがきっかけです。そのときに、地域活性化を目的とした事業に取り組んでいることを知り、仕事に対する熱い思いが伝わってきて、一緒にプロジェクトに取り組むことになりました。

富山にはまったく縁のなかった私が、東京以外では考えていなかったお店を構え、今は自宅兼アトリエという第二の拠点までつくってしまっているのだから自分でも驚きです。そのぐらい射水のまちや人に、強く惹かれるものがあったからだと思います」(エイタブリッシュ代表 川村明子さん)

インタビュー中の川村明子さん
川村さんは、さまざまなジャンルのブランディングを手がける自身のデザイン企画会社〈Apollo&Char Company(アポロアンドチャーカンパニー)〉のクリエイティブディレクターでもある。

「当社はもともと港内の清掃や整備を請け負う会社として、祖父が創業しました。その後、2代目の前社長が港の外まで事業を広げ、私で3代目になります。

地域に関わるさまざまな仕事を行うなかで、現在は土づくりや堆肥づくりにも力を入れていて、そこで密接に関わってくるのが農業であり食べもの。これらをどうやって伝えていこうかと思ったときに、川村さんとの出会いがあり、考え方も共感する部分が大きかったんです」(北陸ポートサービス代表 加治幸大さん)

土は、私たちの生活に欠かせないものでありながら、媒介するものがないと大切さを実感するのはなかなか難しいもの。それらを伝えるために「農」や「食」に着目し、野菜という素材に特化したヴィーガンカフェ、エイタブリッシュが射水のまちにやってきた、というわけです。

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