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富山に行くならコレ食べてみられ!
観光ついでに食べたい富山グルメ10選

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「食べてみられ」は、親しみやねぎらいの気持ちを込めて「食べてください」を意味する富山弁。富山県には、県民が思わず「食べてみられ」と勧めたくなるような、ご当地グルメがたくさんあります。

今回は、富山県に来たら食べてほしいご当地グルメをピックアップしました。「富山といえば!」という定番の味から、意外と知られていない隠れたグルメまで、バラエティ豊かにご紹介します。富山自慢の郷土の味を心ゆくまで堪能しましょう。

Index

高低差4000メートルの大地が育む富山の食

富山湾の海と立山連峰
写真提供:とやま観光ナビ

富山は、「蛇口をひねればいつでも『おいしい水』が飲める」といわれる「水の王国」。その貴重な水源となっているのが、雄大な立山連峰の雪解け水です。

立山連峰の最高峰から富山湾の最深部に至るまで、高低差4000メートル以上のダイナミックな地形では四季折々の野菜や米が栽培されているほか、富山湾ではホタルイカやブリなどの鮮魚が豊富に水揚げされています。清冽な水で育つ作物や魚を長期間おいしく味わうために、食材の保存備蓄を考えた郷土料理も現代まで受け継がれてきました。

そして、富山県は昆布の消費量が全国トップの「昆布県」でもあります(令和5年「家計調査」総務省統計局調べ)。

日本国内で採れる昆布の9割は北海道産であるにも関わらず、昆布が採れない富山県で昆布が大量に消費されている背景には、北前船がもたらした食文化があります。江戸時代から明治時代にかけて北海道と大阪を結んだ北前船によって北海道から昆布が運ばれ、富山では昆布巻きや昆布締めなどの多彩な郷土料理が生まれたのです。

このようにダイナミックな自然環境と、独自の文化が織りなす富山県のグルメは、バラエティ豊かな食文化を育んできました。「食」を知ることで、より富山県を身近に感じられるはずです。

富山グルメ1
富山湾鮨|富山でしか食べられない鮨

寿司下駄にのった十貫の富山湾鮨
写真提供:天然の生け簀 富山湾鮨

日本海に生息する魚介類800種類のうち、500種類が獲れることから「天然のいけす」とも呼ばれる富山湾は水産資源の宝庫。肥沃な大地の栄養分をたっぷりと含んだ河川が流れ込む沿岸の表層部、対馬暖流が流れる中層部、冷たい日本海の深層水が流れる深層部の3層から、鮮度抜群の魚介類が四季を通じて水揚げされます。

「富山湾鮨(とやまわんずし)」という呼び名は、富山湾で漁獲された魚介類を使った寿司のブランド化を進めるため、2017年に地域団体商標に登録されました。

富山湾鮨にシャリに使われるのは、「水の王国」富山県のミネラルたっぷりな水と、豊かな大地に恵まれた富山平野で育った富山県産米。うま味のある粒がしっかりとした米が、寿司ネタのおいしさを引き立てます。そして、1セット10貫として富山らしい汁物つきと規定されています(定価2700円~5000円)。

春から秋の初旬頃は、ホタルイカや白エビ、ノドグロや本マグロが最盛期。秋・冬・春のはじめには、紅ズワイガニや甘エビ、ブリなどが旬を迎えます。地魚のおいしさに感動する富山湾鮨から、四季の移ろいを感じてみてはいかがでしょう。

富山グルメ2
ホタルイカ|天然記念物に指定されている富山ならではの光景

皿に盛り付けられたホタルイカの刺身
写真提供:とやま観光ナビ

回遊性の1年魚(寿命が1年)であり、3月から5月の産卵期に富山湾へやってくるホタルイカ。産卵後にホタルイカが浅瀬に打ち上げられ発光する現象は、「ホタルイカの身投げ」と呼ばれる春の風物詩です。

日中は水深200メートルあたりのところに生息していますが、夜になると海岸近くまで浮上してくるこの現象は富山ならでは。この光景は、世界的にも珍しいため富山市常願寺川河口から魚津港までの沖合海域は「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物にも指定されています。

夜の浅瀬で発光する「ホタルイカの身投げ」の様子
写真提供:とやま観光ナビ

ホタルイカの沖漬けや素干しは一年中楽しむことができますが、旬を迎える春にはボイルしたものを酢味噌和えで食べたり、刺し身を生姜醤油でいただくのが定番。大きくぷりぷりの身は、口の中ではじける食感とワタの濃厚な味わいがおいしく、富山の地酒と一緒に味わうことで最高のマリアージュが楽しめます。

飲食店によっては天ぷらやしゃぶしゃぶなど幅広いメニューがあり、土産店にはホタルイカの加工食品も並びます。

富山グルメ3
白エビ|きらきらと輝く「富山湾の宝石」

カゴに入った水揚げ直後の白エビ

立山連峰をはじめとする標高3000メートル級の北アルプスから、水深1000メートルの海底に到達する富山湾で、海底谷「藍瓶(あいがめ)」に群泳する白エビ。水揚げ直後に透明感のある淡いピンク色の体がきらきらと輝くことから「富山湾の宝石」と称されています。

飲食店でよく見かけられる白エビの食べ方には、唐揚げや天ぷら、素干しなどがあります。とろけるような味わいが口中に広がる刺し身は、ご当地らしい食べ方のひとつ。甘さが引き立つ白エビのかき揚げも、箸が止まらなくなるおいしさです。

白エビの天ぷら
写真提供:とやま観光ナビ

白エビは日本近海に広く分布していますが、漁を行っているのは富山湾だけ。湾内では、4月から11月にかけて漁が行われ、6月から7月が最盛期です。漁が実施される富山市岩瀬地区と射水市新湊地区に行けば、白エビのおいしい店が必ず見つかります。

富山グルメ4
寒ブリ|抜群の知名度を誇る、富山湾の冬の王者

氷の上に並べられた3匹の「ひみ寒ぶり」
写真提供:とやま観光ナビ

日本各地で水揚げされるブリですが、富山湾の寒ブリは特に脂の乗りが良く、抜群の知名度を誇ります。なかでも注目は、富山の西端にある氷見漁港で水揚げされるブランド魚「ひみ寒ぶり」。刺し身、ブリしゃぶ、ブリカマ塩焼き、薄くスライスして食べる汐ブリ、ブリ大根など、さまざまな料理でそのおいしさを実感できます。

寒ブリの刺し盛り
写真提供:とやま観光ナビ

水揚げ最盛期は冬。氷見市では、毎年12月から2月にかけて「ひみぶりフェア」が開催されています。市内の旅館、民宿、ホテル、割烹、寿司店、居酒屋が協力し、各店でブリ尽くしの料理を堪能できる特別な期間で、産地だから実現できる鮮度とコスパの良さでリピーターも多い人気イベントです。

富山グルメ5
ます寿し|徳川吉宗も認めた富山藩の献上品

ます寿し

富山土産や駅弁としても大人気のます寿しは、塩漬けしたマスを使った押し寿司の一種。江戸時代中頃、富山藩士であり料理人でもあった吉村新八(しんぱち)が、越中富山藩三代目藩主・前田利興(としおき)にアユの寿司を献上したことから始まりました。

のちに、富山湾につながる神通川(じんづうがわ)で獲れるサクラマスを使用して寿司がつくられるようになり、江戸幕府第八代将軍である徳川吉宗にもそのおいしさが認められ、富山藩からの献上品として愛されました。

富山県内には数十店舗のます寿司メーカーがあり、使用する米や米の炊き方、マスの種類や味付け、身の厚さまで、それぞれ異なります。各社の味を食べ比べて自分好みのます寿司を見つけてみましょう。

富山グルメ6
昆布|富山の食文化に深く根づく郷土料理

さすの昆布締め
写真提供:とやま観光ナビ

富山の食文化に深く根づいている昆布。身欠きニシンや地元の魚介を昆布で巻いて醤油でゆっくり煮込む「昆布巻き」、新鮮な魚介類や山菜などを昆布で挟んだ「昆布締め」など、昆布を使用した料理がありますが、実はこれらは富山の郷土料理でもあります。

冷蔵技術が発達していなかった時代、魚介類などの鮮度を保つために発達した技術が昆布巻きや昆布締めでした。食材を昆布で挟むことで昆布が余分な水分を吸収し、日持ちを良くさせることから脈々と受け継がれています。

昆布締めには富山湾で獲れた白身魚や白エビを使うのが一般的ですが、肉や野菜、こんにゃくや豆腐を使用したものもあります。昆布巻きかまぼこ、昆布のふりかけなど、お土産にぴったりな加工食品も充実しています。

富山グルメ7
富山ブラックラーメン|知名度は全国区。富山のご当地ラーメン

富山ブラックラーメン
写真提供:富山市観光協会

今や全国に知れ渡る富山ブラックラーメンは、戦後復興期に富山市で誕生した真っ黒な中華そば。一説によると、当時疲れきった労働者たちの塩分摂取のために醤油を濃くしつつ、粗挽きの黒胡椒がかけられたことから、全国屈指の塩辛さが特徴の真っ黒なスープができあがったといいます。

富山ブラックラーメンは、白飯との相性も抜群です。ご飯のおかずになるように計算された大きなチャーシューが印象的ですが、お店ごとに盛り付けや味のスタイルもさまざまなので食べ比べてみるのもおもしろそうです。

富山グルメ8
氷見うどん|江戸時代から受け継がれるご当地うどん

赤巻きや白エビの天ぷらがのった氷見うどん
写真提供:とやま観光ナビ

富山県氷見市の名物・氷見うどんは、お餅のような食感と強いコシ、のどごしの良さを持つ細い麺が特徴です。

その歴史は古く、270年以上昔の江戸時代中期にまでさかのぼります。「高岡屋本舗」の初代が、石川県能登町の輪島素麺の製法を取り入れたことから編み出された糸うどんがルーツとされ、加賀藩前田氏の御用達うどんとしても献上されていました。

おいしさの秘密は製法にあります。日本全国のご当地うどんは手打ち製法が主流ですが、氷見うどんは練った麺生地を棒やロープのように長くして何度も引き伸ばし、細い麺をつくり上げる手延べ製法。手打ち以上に手間のかかる製法ですが、手延べでつくることで独特の歯応えの良さが生まれます。富山湾に面する海辺のまち・氷見市を訪れたら必ず食べたいグルメです。

富山グルメ9
たら汁|旨みが凝縮された富山の伝統汁物

たら汁の定食
写真提供:(一社)朝日町観光協会

スケトウダラを使ったたら汁も、富山県の郷土料理です。スケトウダラとゴボウ、水と味噌のみでつくられるシンプルな料理は、富山の東端にある朝日町発祥の伝統的な汁物。スケトウダラを一匹まるごとぶつ切りにして、身・頭・肝・白子・真子を豪快に煮込むことで、うま味が凝縮された一杯ができあがります。

ブツ切りにしたスケトウダラを鍋で煮込んでいる様子
写真提供:(一社)朝日町観光協会

昔からタラの水揚げ量が豊富な朝日町では、漁へ出た夫を温かい料理で出迎えようと漁師の女房たちが大鍋を沸かし、味噌とタラを入れ、煮込んでつくったのが始まりと伝えられています。

2023年秋には、「ヒスイ海岸タラ汁まつり」が5年ぶりに開催され、「たら汁街道」と呼ばれる海岸沿いの国道8号周辺にはたら汁の名店が軒を連ね、大いに祭りを盛り上げました。

富山グルメ10
かまぼこ|富山のかまぼこは板のない渦巻き状

昆布巻きかまぼこと色巻きかまぼこ
写真提供:とやま観光ナビ

かまぼこといえば、魚のすり身を板につけて成形する板かまぼこのイメージが強いですが、富山のかまぼこは板のない渦巻き状。

これは、北前船によって運ばれた昆布から昆布巻きがつくられるようになり、白身魚のすり身を昆布で巻く「昆布巻きかまぼこ」が富山でつくられるようになったことが由来しています。断面に鳴門(なると)巻きのような模様ができる特長を活かし、赤や青の色を付けた「色巻きかまぼこ」も浸透しました。

富山のスーパーでは、昆布巻きかまぼこと色巻きかまぼこが一緒に並んでいるのも日常の風景です。

鯛や鶴、亀などに成形された細工かまぼこ
写真提供:とやま観光ナビ

そのほか、色づけされたすり身を鶴亀や松竹梅などに成形した「細工かまぼこ」も富山特有のもの。縁起物として重宝され、富山では結婚式の引出物の定番として親しまれています。職人技が光る風味豊かなかまぼこは、富山の食文化を語る上で欠かせない一品です。

富山グルメのトビラを開こう!

旅先での偶然の出合いもいいですが、あらかじめ富山グルメのルーツを知っておけば、もっとおいしく、もっと身近に富山を感じられるはず。“高低差4000メートル”の環境が生んだ、食文化はまだまだほんの一部です。

富山の食について知ったあなたは、まさに富山のドアノブに手をかけたところ。そのトビラを開いて富山の食文化を存分に堪能してみてください。

credit text:松永春香

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