
世界的な建築家の共演。
自然あふれる富山県南砺市に開業予定、
プレイアースパーク ネイチャーリング フォレスト | Page 3
series|とやまwellbeing place
富山の建築家が見た桜ヶ池と富山の水
最後に紹介する建築は、富山にも拠点を持って活動している本瀬齋田建築設計事務所(サモアーキ)の本瀬あゆみさん、齋田武亨さんによるアクティビティセンターです。桜ヶ池の水辺でアウトドア遊びをする拠点となります。そこにはふたりが富山に拠点を持っているからこその視点が込められていました。

「富山県は南北ですごく高低差が大きくて水が流れています。だからため池とか用水とか、水によって長い時間かけてつくられた風景がたくさんあるんです。私たちも好きで、よく見に行っていました。名も無い野良の滝なんかも好きです」と、水への興味が強い齋田さん。富山県は飲み水がおいしいことでも有名です。
「桜ヶ池は南砺市の方々が、時間をかけて、農業や生活のためにつくった池。山から流れてきた水を田んぼに流す。そうした営みを象徴するような場所なんです。今回はその場所の土を壁に使用していく予定です。桜ヶ池と同様に、これから10年、100年と継続される活動によって少しずつ削られていく。そんな風景を目指しています」(齋田武亨さん)

南砺市は自然豊かな土地です。南砺の人々の暮らしも、プレイアースパークが目指す暮らしのひとつのようです。
「私たちは富山市が拠点ですが、南砺市はすごく“ネイチャリング力”が高いと感じます。ネイチャリングのエリートみたいな人たちのまち。例えば、毎朝、食卓に並ぶ木の実や野草を採りに行くことを、日課にしているような暮らしとか。だから、ここを訪れた人が新しいネイチャリングを南砺の人から発見し、それを発信できる場所になるとおもしろいと思います」(齋田武亨さん)
本瀬齋田建築設計事務所(サモアーキ)は、南砺市利賀村に、今や世界中からグルマンを集めるレストラン〈L’evo〉を設計しています。自然のなかにできた、価値創造の最たる例です。
「ちょっとおこがましくはあるんですけれども、建物を設計することを通して、その土地の魅力をPRできればいいなと思っています。もともと誰も価値だと思っていないところに、“場所”をつくったことで価値が生まれる、場所の価値を引き出してあげる。それは富山に住む私たちができることなのかと思います」(本瀬あゆみさん)
年間100〜150万人という観光客が見込まれている〈プレイアースパーク ネイチャーリング フォレスト〉の構想には、行政の受け入れ体制も重要です。当然、宿泊施設、飲食店、公共交通などの整備が必要になり、それにともない雇用も生まれていくでしょう。
南砺市の8割は山林。「豊かな自然を大切にし、エコビレッジ構想やSDGs未来都市をまちづくりの中心にして取り組んできました。まずはコンセプトを共有してまちづくりをしていくことが大切だと思います」と言うのは、南砺市長の田中幹夫さん。
本当の意味で、手つかずの自然というのはもうあまりありません。であるならば、人間が最低限の手を加えることで、逆に土地の魅力を引き出し、自然と共生していく。子どもたちだけでなく、どんな人にとっても生きるチカラが湧いてくる施設になりそうです。
開業予定:2027年 初夏
credit text:大草朋宏 photo:那須野友暉