立山連峰に抱かれた山麓に位置する富山県立山・上市エリア。富山市中心部から車で30分ほど、少し足を延ばすと、3000メートル級の山々が連なる雄大な山並みが。立山の麓で培われてきた歴史と文化、大自然の恵みを存分に受けるこのエリアの魅力を「自然」「リトリート」「手仕事」の3つのキーワードで紐解きます。忙しい毎日を過ごすなかで、日常から非日常へ。モデルの高山都さんが、自然と共に生きるやさしい営みを感じられるスポットを巡る旅に出ました。
仕事でもプライベートでも日本各地のいろいろな場所を訪れている高山さん。富山を訪れるのは実は2回目。上市町には初めての訪問です。
「富山は山も川も、田んぼもあって、日本の原風景を身近に感じられる印象がありますね。降り立った瞬間から豊かな自然に包まれている安心感もあって、初めての立山・上市でどんな出合いがあるのか楽しみです」
立山信仰のはじまりの地〈大岩山日石寺〉で過ごす神聖な時間
まずは、立山信仰のはじまりの地とされる〈大岩山日石寺(おおいわさんにっせきじ)〉を訪ねました。
「旅先でもお寺や神社にはときどき行くのですが、なにかお願いごとをするというよりは、いつも元気に過ごさせてもらってありがとうございます! とあいさつの意味を込めてお参りすることが多いです」と高山さん。
百段坂を上りきると、本堂が見えてきました。かつて立山連峰を目指す修験道が、旅の途中に安全祈願で訪れたことで栄えたお寺です。戦国時代に上杉謙信の兵火に遭ったものの、その後、加賀前田家の祈願所として再興し、日本有数の一大霊場となりました。
お参りしようと本堂の中をのぞいてみると、ふと高山さんの表情にかすかな緊張感が。
「すごい……迫力があるけど、神秘的……」と感嘆がこぼれます。
目線の先には、薄暗い洞窟のような空間に佇む、巨岩に浮き出る5躯の仏像。その中心に鎮座する仏像の両目を見開く表情と見下ろすような視線にいきいきとした迫力がみなぎっています。〈不動明王磨崖仏(ふどうみょうおうまがいぶつ)〉です。その大きさや保存状態の美しさから磨崖仏の日本最高傑作と称されることもあるのだとか。
「藤水(ふじみず)」と呼ばれる磨崖仏の巨岩を巡って流れ出る霊水をいただけるスポットもありました。この藤水には「目の不自由な参拝者が夢で『大きな藤の木の水で目を洗うといい』というお告げを受け、水を探しあて洗ったところ目が開いた」という言い伝えがあるのだそう。その逸話が広がり、参拝にきた方が藤水を汲みやすいよう給水所を設置。今では富山の名水巡りの地としても人気の場所です。
「想像以上に冷たくて、まろやかでおいしい! 富山のお水は軟水なんですよね。たくさん歩いた後の体にも沁みます。ごくごく飲めちゃいますね」と高山さん。
十二支の守護本尊である「八体の仏」が、本堂横にありました。子、丑、寅……など、それぞれ守る十二支が決まっているのだそう。
「私の干支はどれかな……。仏像って表情がやさしくていいですね」(高山さん)
富山では、「大岩のお不動さん」と親しまれている〈大岩山日石寺〉。広い境内の中は、魅力的な見どころが満載です。写仏や、巡礼、滝行などの修行体験も可能。
「こうして自分の足と気持ちを使って、実際に訪れてみるというのはすごく貴重な経験だなと改めて思いました。お祈りするのも、お水を汲むのも、生半可な気持ちではできないこと。そうやってお参りすると、心も体もしゃんと整う気がします」(高山さん)