豊かな風土と人が紡ぐ伝統工芸品。
高山都が立山の手仕事に触れる旅へ | Page 2
feature|PRIVATE DOORS「高山都の五感で楽しむ、立山・上市リトリート」
「越中瀬戸焼」を知って体験できる
〈越中陶の里 陶農館〉
最後に、器好きの高山さんと訪れたのは、430年以上の長い歴史を持つ、富山の伝統工芸品「越中瀬戸焼」にまつわる展示や陶芸体験を行っている〈越中陶の里 陶農館〉。
立山の麓の新瀬戸地域からは、焼きものづくりに適した良質な土が豊富に産出されるのだそう。多種多様な粘土層があり、赤茶、黄、青、白と色も豊富。そこから幅広い作品が生み出されています。現在は7名の作家が、暮らしに根づいた器や茶陶など、「今を継ぐ新たな越中瀬戸焼」を目指して作陶に励んでいます。
高山さんも陶芸体験に挑戦。この日指導してくれたのは、スタッフの山田智子さん。〈陶農館〉で働きながら2020年に「かなくれ会」の一員になったそう。アドバイスをもらいながら、薄く伸ばした粘土をくり抜き、かたちをつくっていきます。
「自分が使うシーンを想像すると、晩酌のときのおつまみやおかずをのせる器がいいかな〜。こうして直接触れてみると、なんだか落ち着きますね。思ったより土もひんやりしていて、やわらかい! 」(高山さん)
縁を棒や指で折り曲げたり、表面には繊細なラインを細かく入れ、「もう少しこっちにも線を足して……」と高山さんの好みの模様やかたちに仕上がるよう微調整を重ねます。
「この土地の土を薪窯で焼いて器をつくっています。薪窯で焼くと、灰の降りかかり方や火の当たり方、釉薬の流れ方がそのときの炎によって変わるので、窯を開けてみるまでどう焼き上がるかがわからないんです。薪の状態や天気によっても左右されます。でも、わからないからこそ、おもしろいんです」(四郎八窯・加藤さん)
「自然から生み出される色、流れ、勢いを感じながら作陶できるところが越中瀬戸焼の魅力だと思います。雄大な立山連峰に囲まれながら、四季を感じて、土を触って。仕事終わりに自分で作った酒器でお酒を飲むのがしあわせです」(四郎八窯・加藤さん)
「加藤さんの酒器を見ていると、日本酒が飲みたくなりますね。あ、この急須もすてき。色のムラがとってもきれい!」と思わず手に取ったのは、小ぶりな急須。加藤さんの暮らしや好きなものが表現された作品に触れ、「手仕事を感じられる作品って、やっぱりいいですね。ストーリーがあると、より愛着が持てます」と高山さん。
「秋になると毎年1度、登り窯で焼くんです。一般の方が体験でつくった作品も焼くことができます。丸2日間、10分ごとに薪をくべていくので、大変なことではあるのですが、登り窯はやっぱり特別。どんなふうに焼きあがるのか、みなさん毎年楽しみにしているんです」(四郎八窯・加藤さん)
「陶芸体験で直接土に触れてみたり、加藤さんのお話をうかがって、時には失敗しながら、一点ずつ思いを込めてつくっているんだなと、改めて実感できました。旅先でいろいろな器や作家さんを訪問してきましたが、初めて訪れた立山でもこうした新しい発見がたくさんあって。これこそ旅の醍醐味だなと。なんだかパワーをもらった気がします」(高山さん)
tel:076-462-3929
営業時間:9:00~16:00
定休日:火曜・年末年始
Web:越中陶の里 陶農館
※陶芸体験は要予約。手びねりコースは教材粘土1540円、越中瀬戸土 1430円。最新の情報については公式サイトでご確認ください。
「立山の雄大な自然のなかで生まれる手仕事は、長い歴史や郷土に根づく文化を大切にしながらも、今の暮らしにも寄り添ってくれる。そんな伝統や技術を継承する職人や作家さんたちの、ものづくり精神が育まれる土壌が、たくさんあるんだな、ともっと知りたくなりました。私が今回旅をした立山・上市エリアでは、移動中や訪れた場所からも、立山連峰を眺めることができて、ずって見守ってくれているような安心感があって、次こそは登ってみたい。夫も山登りが好きなので、一緒に行く計画をたてようかな」(高山さん)
立山の手仕事に触れ、ふと目に入る山々や原風景に高山さんも心身ともに癒されたようです。その美しい景色がどこか懐かしさを感じさせてくれます。早くも次の旅の計画も!? たまには少し足を延ばして、直接ぜひ見て、聞いて、味わって。五感が研ぎ澄まされる富山旅へ。きっと新しい出合いが待っているはずです。
1982年生まれ。モデル、女優、ラジオパーソナリティ。商品のディレクションなど幅広く活動し、丁寧な生き方を発信するInstagramも人気。趣味は料理、ランニング、器集め、旅行。Instagram|@miyare38
credit text:花沢亜衣 photo:黒川ひろみ hair & make:鈴木智香