歴史ある寺院、クラフトな食、豊かな自然。
「井波」を在原みゆ紀がぶらり散歩 | Page 3
feature|PRIVATE DOORS「在原みゆ紀が旅する南砺。民藝・クラフトトリップ」
おいしくてより良い「食」を。
ベーカリー&カフェ〈LAW〉
ちょっとおなかも空いて、八日町通りから歩いて5分ほどの〈LAW〉へ。天然酵母のパンや南砺産の素材にこだわった料理が味わえるベーカリー&カフェです。富山市出身の大田直喜さんがUターンし開業しました。
LAWのパンは、酵母菌を自家培養して発酵させてつくっています。酵母の種類はレーズン、ビール、ルヴァンの3種類。生地にはいっさい添加物を使用せず、シンプルな材料を中心に配合しています。また、カフェで使用するドレッシングやマヨネーズもすべて手づくり。
「お野菜盛りだくさんでおいしそう〜。彩りもとってもきれいですね。これはなんていう野菜ですか?」(在原さん)
「空芯菜ですね。こっちはシカクマメ。これはオクラです。夏だとオクラだけでも5種類ぐらいあります。手に入る野菜に合わせて考えるので、季節ごとにメニューも変わります」(大田さん)
「(野菜を食べて)すごくおいしい……! 自分が普段食べているお野菜とは味が全然違うような気がします。新鮮だからなのかな。それに、一皿でこんなにいろんな種類のお野菜を食べられるなんてうれしいです」(在原さん)
輸入にともなう環境への負荷を数値化した「フードマイレージ」も考慮し、原料や素材を仕入れる際は、価格よりも近距離の生産者であることや、農薬を使っていないことなどを意識しているといいます。
「パンの生地をつくるための湧き水も近くで汲めるんですよ。それにいい野菜をつくっている生産者さんが多いから、南砺市でお店を始めたというのもあります」(大田さん)
食にこだわる母や祖母のもとで育ち、かねてからサステナブルやエシカルといったテーマや環境問題に関心を持っていたことから、衣から食の業界へと転身。鳥取にある〈タルマーリー〉で5年間、パン職人としての修業をしました。
「そこでは天然酵母のパンとビールをつくっていて、最初はビールに興味があったのですが、いろんなきっかけがあってパンづくりを学び始めました。ちなみに、井波の〈NAT.BREW〉とコラボビールをつくって販売しているんですけど、いずれはブリュワリーも開けたらいいなと思っています」(大田さん)
〈haiz coffee〉で味わう
1杯のコーヒーと物語
おいしいパンを食べたら、やはりおいしいコーヒーもしっかりおさえておきたい。それは在原さんも同じようです。八日町通りを〈LAW〉とは反対方向へ歩くこと10分。約2年前にオープンした〈haiz coffee〉というロースタリーを併設したコーヒーショップで、のんびりと過ごすことにしました。
haiz coffeeでは主に、コロンビアのコーヒー農家から豆を直接買いつけています。ホームページにはひとりひとりの生産者のストーリーが丁寧に綴られています。こちらを読むと、ひとくくりに産地だけで豆を選ぶよりも、この人がつくる豆を味わってみたい。そんなふうに感じさせてくれます。
「味以外にもコーヒーを楽しむ需要な要素があると思っています。経験やつくり手のストーリー、もちろん飲み手のそのときの気分も。カップの外も中も同じくらい重要。そうしたプロセスが集約された”人情の一杯”だと思っています」と話すのは焙煎士の清水栄治さん。
井波という小さなまちで起業し、世界へとつながる未来も見据えているようです。
「井波エリアを訪れたときに、まちの魅力に惹かれてオープンしました。これから成長する可能性の高いまちのほうがおもしろいと思ったんです。起業や新しい挑戦などもやりやすいですよね」(清水さん)
1階スペースは奥に長いつくりで、出入り口が大通りと裏通りの2箇所あります。座ってゆっくりというよりは、ちょっと腰かけるか立ち飲みがいい雰囲気。カウンターで注文してさっとテイクアウトにも最適です。在原さんもテイクアウトでコーヒーをいただいて、1日を振り返る時間となりました。
木彫のまちとして有名で伝統も色濃く残っている井波エリア。一方で若者の移住者が多く、こだわりの強いお店がたくさん集まっています。このまちは門前町であり、両者をつないでいるのは、やはり瑞泉寺かもしれません。
旅先では必ずまちのお寺や神社を訪れるという在原さんも「まちの本来の姿というか、雰囲気もわかるような気がするんですよね」と言います。
緑と水という自然を浴び、伝統文化を知り、若者の暮らしもある。小さなエリアにギュッと凝縮された、実りのある“散歩”となったようです。
ファッションモデル。1998年生まれ、千葉県出身。メンズウェアをバランスよく取り入れたオリジナルな着こなしや明るく自然体な人柄が支持され男女問わずにファンを持つ。男性誌、女性誌、広告やブランドディレクションなど幅広く出演依頼が舞い込み、最近は国内にとどまらず韓国でも活動中。Instagram|@ariharamiyuki
credit text:井上春香 photo:松木宏祐 hair & make:ボヨン styling:中井彩乃