日本の美意識と信仰が深くいきづくまち
在原みゆ紀が感じる民藝の聖地・福光 | Page 2
feature|PRIVATE DOORS「在原みゆ紀が旅する南砺。民藝・クラフトトリップ」
版画家・棟方志功、日本画家・石崎光瑤。
郷土ゆかりの作家を伝える〈福光美術館〉
光徳寺から車で5分とほど近い、緑と野鳥のさえずりに包まれた〈福光美術館〉。今年で30周年を迎える、森の中に佇む閑静な美術館です。
世界的な版画家の棟方志功(むなかた・しこう)と福光町(現南砺市)出身の日本画家の石崎光瑤(いしざき・こうよう)の作品を主に展示しており、年に6回ほど企画展も開催しています。
ジャンルの異なる2大作家の美術作品を深く鑑賞できるのも、この美術館の特徴であり大きな魅力です。
花鳥画の第一人者でもある石崎光瑤の「燦雨」や「寂光」、棟方志功が福光時代に制作した作品群は必見。なかでも「二菩薩釈迦十大弟子」は、第28回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1956年)で日本人初の国際版画大賞を受賞した作品としても有名です。
見ごたえのある貴重な作品だけではなく、棟方志功の「いいお顔」にも出会えます。フォトスポットがあるので、ここは来館記念に1枚ぜひ。
芸術への親しみ方はさまざま。作品に惹かれて入るも良し、アーティストや作家の性格や生い立ちへの興味から入るも良し。きっかけとなる入り口や自分との接点を見つけることこそが、楽しむための第一歩になるはずです。
また、美術館の分館として、福光で棟方が暮らした住居兼アトリエの〈鯉雨画斎〉を見ることができます。押入れの板戸には鯉や鯰、亀、鰻が、厠の天井や壁には仏や天女などがいたるところに描かれ、創作への抑えがたい意欲が伝わってきます。
「戦争から逃れてやってきた富山での生活は、素晴らしいものだったんですね。こうして実際に残っているものを見られるのは、すごく貴重だなあと思います」(在原さん)
そのほかにも、床の間に柳宗悦の書が飾られていたり、疎開時に東京から持参したという濱田庄司作の火鉢が置いてあったり。茶の間には、芹沢銈介の版画作品や河井寛次郎から新築祝いに送られた京風の神棚などが飾られ、民藝好きにとってもひじょうに魅力的な空間です。
tel:0763-52-7576
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:火曜、冬季(12/1~1/3)、展示替期
Web:南砺市福光美術館