山のイラスト
杜人舎(もりとしゃ)のカフェスペースでお茶をいただく在原みゆ紀さん
travel, gourmet, craft

日本の美意識と信仰が深くいきづくまち
在原みゆ紀が感じる民藝の聖地・福光 | Page 3

feature|PRIVATE DOORS「在原みゆ紀が旅する南砺。民藝・クラフトトリップ」

“泊まれる民藝館”〈杜人舎〉で
暮らしのなかにある「美」を問う

杜人舎の入口をくぐる在原さん
2024年、城端にオープンしたホテル、カフェ、ショップ、講堂、テレワークスペースが一体となった複合施設〈杜人舎〉。

棟方志功の足跡を辿っていると、あらためて「民藝」とはどういうものか知りたい、土地との関わりを掘り下げてみたい、と思う人も多いのではないでしょうか。そこで、最後に南砺市の新たなカルチャースポットを訪れました。

大きなテーブルとベンチが配置された杜人舎の講堂
カフェスペースとしても利用されている講堂には、本棚には民藝や民俗文化にまつわる書籍や雑誌が揃う。

550年もの歴史を持つ城端別院 善徳寺内にある〈杜人舎(もりとしゃ)〉は、“暮らしの糧をつくる 泊まれる民藝館” がコンセプトの複合施設。民藝運動の創始者である柳宗悦が富山を訪れた際、民藝思想の集大成となる論文『美の法門』を滞在しながら書き上げた場所が、この善徳寺でもあります。

カフェスペースでお茶をいただく在原さん
趣のある落ち着いた空間でお茶をいただきながら、ほっと一息。
城端銘菓の和菓子数種類と飲み物がお盆にのっている
南砺市の城端(じょうはな)の和菓子をひと口ずつワンプレートに。城端銘菓セットは選べるドリンク付き(1000円)。
かやの実を使った和菓子「かや焼き」をつまむ
こちらは南砺市城端の銘菓、かやの実を使った「かや焼き」。「歯ごたえがあっておいしい!」。

研修道場は、柳宗悦の愛弟子である建築家の安川慶一によって設計されたことでも知られています。宿泊や研修以外にも利用でき、プロダクト論としてではなく、暮らしの哲学であり社会運動としての民藝を問い直す、集いの場としてもひらかれています。

杜人舎スタッフの伊豆牧子さんと在原さんが談笑中
メニューや施設について話をしてくれたのは、杜人舎スタッフの伊豆牧子さん。
杜人舎を訪ねた印象を語る在原さん
「お寺に泊まって民藝の器や道具にふれることで、より思想を身近に感じられるような気がします」(在原さん)
小皿やコーヒーカップなどが展示されている一角
韓国から南砺市に移り住んだ陶芸家、金京徳(kim kyungduk)さんの作品もある。

柳宗悦らが提唱した「民藝」とは「民衆的工芸」を略した言葉であり、およそ100年以上前に生まれた美の概念につながるものでありました。1920年代当時の日本で近代化が進むなかで、生活のなかで用いられる手仕事のものに宿る美、すなわち「用の美」を通じて「美」を捉え直そうとしたのが民藝運動のはじまりです。

1940年代、富山の地を訪れた柳は、砺波地方の自然と共に生きる人々に出会い、この土地の精神風土を「ここには土徳がある」と表現しました。

講堂のベンチに座り施設内を眺める在原さん
建物は、柳宗悦の愛弟子である安川慶一が設計した研修道場を改修している。

「土徳(どとく)という言葉を説明するのはなかなか難しいですが、あえて一言でいうなら、土地の品格のようなものでしょうか。それは自然や文化であったり、食であり人であり、あらゆるところに宿っていると思います。

杜人舎には、泊まるだけでなくカフェやショップもありますし、さまざまな体験・研修プログラムもございます。地域の人々や訪れる人たちにとって、美しい暮らしの学び舎として、さまざまな暮らしの糧をつくる場として機能していけたらと思っています」(伊豆さん)

「善徳寺 杜人舎」の宿泊施設「同朋研修道場」の入口に立つ在原さん
Information
杜人舎 Cafe&Shop
address:富山県南砺市城端405 城端別院善徳寺内
tel:0763-773-732
営業時間:ランチ11:00〜15:00、カフェ15:00〜17:00(16:30L.O.)、ショップ11:00〜17:00
定休日:月・火曜
Web:杜人舎 Cafe&Shop

「光徳寺の日本と世界の民芸品のコレクションのミックス感といい、棟方志功さんの住まいのいたるところに描かれた絵といい、まずは自分たちが楽しむことが民藝の魅力でもあるような気がしました。そうやって愛着を持ったものには、自然と大切にしようとする気持ちが生まれると思います。富山での旅を通じて、そんなことを感じましたね」(在原さん)

ものは暮らしのなかで使われてこそ、輝く瞬間があります。“古いものが好き” という在原さんのものに対する考え方と、民藝における「用の美」の価値観は、少なからず重なる部分があったようです。

また、人と自然によって育まれる「土徳」の文化にふれることは、現代において失われつつある大切なものを再確認させてくれるようでもありました。自分自身への小さな「問い」を携えて、赴くままに南砺市の福光や城端を旅してみてはいかがでしょうか。

在原みゆ紀さん
Profile 在原みゆ紀

ファッションモデル。1998年生まれ、千葉県出身。メンズウェアをバランスよく取り入れたオリジナルな着こなしや明るく自然体な人柄が支持され男女問わずにファンを持つ。男性誌、女性誌、広告やブランドディレクションなど幅広く出演依頼が舞い込み、最近は国内にとどまらず韓国でも活動中。Instagram|@ariharamiyuki

credit text:井上春香 photo:松木宏祐 hair & make:ボヨン styling:中井彩乃

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