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魚津からひと缶の幸せを届ける。
人と人を結ぶクッキー缶〈チージィーポッシュ〉

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海と山に囲まれた、美しく豊かな自然と立山連峰をのぞむ魚津市。そんな港町で今まさに話題のお菓子がつくられていることをご存知でしょうか? その名も〈Cheesy Poche(チージィーポッシュ)〉。
厳選された素材とシンプルな製法でひとつずつ丁寧につくるチーズクッキー缶です。

魚津の洋菓子専門工房〈ZAXFOX〉のオーナー・芦崎貴さんがクリエイティブユニット〈KIGI〉と出会い、お菓子研究家の福田里香さんをレシピ監修に迎えて誕生したという、このお菓子。2021年秋、毎週日曜と火曜に公式オンラインショップで販売を開始して以来、同時に即完売してしまうほどの人気ぶり。今年5月には、工房の一角にクッキー缶を直接購入できる〈Cheesy Sweets Counter(チージィースイーツカウンター)〉がオープンしました。

〈チージィーポッシュ〉の黄色缶と同じデザインが使用された手提げ袋
クッキー缶のデザインは、KIGIの植原亮輔さんと渡邉良重さんによるもの。〈チージィーポッシュ〉の黄色缶はチーズを連想するイエローがキーカラー。トムとジェリーからインスピレーションを受けたネズミとネコのイラストも。

かわいくておいしい。
〈チージィーポッシュ〉にピンク缶が登場

季節によって詰め合わせが変わる〈チージィーポッシュ〉のクッキー缶。秋から初夏(10月〜5月頃)には黄色缶、梅雨入りから晩夏(6月〜9月頃)の時期には空色缶を販売。その時期に合わせたチーズクッキーを通年で楽しめます。

黄色と空色のクッキー缶が並ぶ
黄色の缶にはメレンゲ入りのオリジナル〈チージィーポッシュ〉、空色の缶にはカントゥッチーニ入りの〈チージィーポッシュ ソライロカン〉(各3650円)。
〈Cheesy Poche〉のクッキー缶を開けた状態
黄色缶のふたを開けると、2種類のチーズクッキーと、中央には口直しにもぴったりなメレンゲが。爽やかなレモンフレーバーで、たっぷり入ったレモンピールは存在感がありながらもクッキーとの相性も抜群。

クッキーには、羊のミルクを原料とした“イタリア最古のチーズ”といわれてる「ペコリーノ・ロマーノDOP」(地域や伝統に根ざした品質のすぐれた製品が対象となるヨーロッパの品質認証マーク付きのチーズ)を使用。フランス語で「絞り出しクッキー」を意味する「poche(ポッシュ)」が名前に入っているとおり、絞り出しにもこだわりが。重ね絞りにして生地のなかに、ふんわり空気を巻き込んでいるため、口に入れた途端に、サクサクと溶けるなめらかな口当たりになるのです。

クッキー生地を手絞りする様子
美しい重ね絞りのラインは、ほんの少し曲がるだけで、見た目だけでなく食感も変わるため、パティシェが一枚ずつ丁寧に手絞りしています。

〈チージィーポッシュ〉のこだわりは、同じ絞り出しでも、3段重ねと2段重ねがあり、それぞれ引き出される風味や歯ごたえが違うこと。3段重ねに絞った生地は生のペコリーノの風味を大切にしたやさしい焼き加減、2段重ねの生地は芯までじっくり焼き上げ、焦げたチーズの旨みを存分に楽しめるよう工夫されています。

2023年10月に誕生したピンク色のクッキー缶
今年10月には〈チージィーポッシュ〉2周年を記念して、「コゲカン」を新たなパッケージで発売スタート。香ばしい焦茶色のクッキーが引き立つ、華やかなピンク色のデザインに(3650円)。

実は魚津生まれ。
〈チージィーポッシュ〉の直販所が誕生

〈チージィースイーツカウンター〉の外観
〈チージィーポッシュ〉が日々大切につくられているZAXFOXの工房の一角に併設するかたちで新たに誕生した〈チージィースイーツカウンター〉。小さな窓のある白いカウンターが目印です。
クッキー缶と同じデザインが使われたカウンター
クッキー缶と同じく、カウンターのデザインもKIGIが担当。細かいディティールまで、〈チージィーポッシュ〉の世界観がたっぷり詰め込まれています。

できたてを味わえるのはもちろん、このカウンターでしか購入できない商品との出合いも、直接お店を訪れる楽しみのひとつ。店舗限定で販売しているプチサイズの「mignon(ミニョン)」は、フランス語で“小さくて可愛らしい”と意味があるそう。

4種類の「ミニョン」が並ぶ
「ミニョン」は、チージィーポッシュ、コゲ、レア、レモンメレンゲの全4種類。レアは3段焼き、コゲは2段焼きになっているのもポイント。
ZAXFOXのオーナー・芦崎貴さん
「同じチーズでも、焼き加減や断層が異なることで引き出される味や食感が異なります。それぞれの味わいを楽しんでいただけたらうれしいです」と話すのは、ZAXFOXのオーナー・芦崎貴さん。
カウンターで手渡しされるクッキー缶

「もともと2018年に本社工場を移転したときから、スペースを活用できないかと考えていました。そこで2021年に〈チージィーポッシュ〉が誕生したのですが、『クッキー缶を直接購入できませんか?』と、お客さまからよく聞かれるようになって。せっかく工房があるので『できたてを味わってほしい』と思うようになり、工房の一角を店舗にして、まずは地元の富山の人に、直接購入できる“非日常”が、日常で楽しめるようにできたらという思いでスタートしました」

カウンターに店員さんが立ってお客さんをお出迎え
富山近辺の方だけでなく、全国各地から足を運んでくれる方も増えている。なかには、〈チージィーポッシュ〉を目的に魚津を訪れるお客さんも。

人と人をお菓子で結ぶ。
唯一無二のクッキー缶を目指して

手提げ袋に入った〈チージィーポッシュ〉

〈チージィースイーツカウンター〉は単なる販売所としてだけではなく、つくり手の方もお店に立つこともあり、交流の場にもなっている様子。「自分へのご褒美や、大切な人へのプレゼントなど、直接お客さんの顔をみて、その思いを知ることができるのもうれしい」と、芦崎さん。その始まりとなった〈チージィーポッシュ〉。そもそもなぜ「クッキー缶」だったのでしょうか?

「2005年から『サクラスイーツ』(ZAXFOXが運営する洋菓子店舗)がスタートし、商業施設などで対面販売などを行っていたのですが、2018年頃から小売業のあり方を考えるようになって。本社工場を入善町から移転したり、コロナ禍もあり、ただ販路を増やしていくのではなく、お菓子づくりで社会貢献できる道を模索していました。単なるパッケージでなく、お客さんが食べたあとも思い出や記憶に残るプロダクトやお店にもデザインを取り入れることに興味があったんです」

クッキー缶

そんなタイミングで、東京を拠点に活動する、KIGIの植原さんと渡邉さんに思い切ってメールを送ってみたところ、実際に魚津に来ていただけることに。芦崎さんは「富山の土壌にお招きすることで、県内のお菓子やパティシェの基礎もあげていきたい」という気持ちが芽生えたそう。そこから、お菓子研究家の福田里香さんへとつながり、もともとチーズケーキを看板商品に持つ、ZAXFOXの情熱や技術を活かして、これまでにない新しい商品をつくることに。

このような構想から約1年半ほど、たくさんの試行錯誤と試作を繰り返しながら、2021年9月に完成したのが、〈チージィーポッシュ〉のクッキー缶です。さらに今年6月からは台湾でもオンラインでの注文が可能になり、世界へと広がりを見せています。

お店周辺のりんごの木
魚津は富山県を代表するりんごの産地。「お店の周辺にはりんご畑がたくさんあるので、りんごジュースやシードルと合わせたり、魚津を訪れたらぜひ味わってもらいたいです」と芦崎さん。
手づくりの魚津観光マップ
スタッフの方が魚津観光を楽しんでほしいという思いから、おすすめのスポットを取材し、制作した案内マップも。
〈チージィーポッシュ〉のクッキー缶に添えられたお礼カード

「国境を超えて人と人を結ぶお菓子をつくるという思いで、お菓子づくりをスタートしました。日本の『富山』という場所に、こんなお菓子があるんだ! とまずは知ってもらいたいし、ぜひ味わって楽しんでもらいたい。まずは、世界中の人が興味をもってくれるような唯一無二のクリエイティブなお菓子を届けること。〈チージィーポッシュ〉をきっかけに、富山の人も県外の人も魚津にふらっと訪れたくなる。そんな存在になれたらうれしいです」

Information
Cheesy Sweets Counter(チージィースイーツカウンター)
address:富山県魚津市吉島63-1
営業時間:月〜金曜10:00〜17:00、土曜9:30〜17:00
定休日:日曜・毎月第2水曜
※チージィースイーツカウンターでは、お一人さま10缶まで購入可能。商品は数量限定のため、営業時間中でも予定数に達し次第、販売終了となります。
Web:Cheesy Poche
Instagram:@cheesy_poche
Information
コロカル
※日本のさまざまな場所とつながり、新しい日本の魅力を発見するウェブマガジン『コロカル』では、〈チージィーポッシュ〉のクリエイティブディレクションを務める〈KIGI〉さん、レシピ監修を担当する福田里香さんのインタビューを紹介しています。こちらもご覧ください。
Web:コロカル

credit text:大西マリコ photo:黒川ひろみ

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