山のイラスト
ローカルコンビニ〈立山サンダーバード〉の外観
travel, gourmet

“ローカルコンビニ”という新たな目的地。
〈立山サンダーバード〉を訪ねて

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均一化された品揃えとおいしさよりも
偏った視点と見た目のおもしろさが魅力

富山と長野を結ぶ山岳観光ルート、立山黒部アルペンルートに向かう道の入り口にある〈立山サンダーバード〉。登山やハイキング、スキーを楽しむ人たちの栄養になるようなものを提供したいという思いから、1996年にオープンしました。

当初は「普通のコンビニ」だったものの、現在は「ユニークなローカルコンビニ」として県外や海外からもここを目指してやってくる人も多く、立山の新たな観光スポットになっています。

たくさんの種類が並ぶサンドイッチコーナー
店内に入ると正面に見える、人気のサンドイッチコーナー。棚の上にあるクリスマス“ふう”のツリーは常設。子どもが楽しめるようにという店長の思いから。

名物となっているのが、毎日お店で手づくりしているサンドイッチとおにぎり。売れたらその都度つくっては補充するスタイルなので、お客さんが多い日は大忙しです。

サンドイッチは定番のものから変わり種まで50種類以上もあるそうで、過去には100種類以上ものメニューがあったというから驚きです。おにぎりはというと、具材の種類の多くがジビエという攻めっぷり。そのほか変わり種もさまざまです。

〈立山サンダーバード〉店長/代表代行の伊藤敬吾さん
「いろんなものをつくるのが好きなんです」と話すのは、店長であり代表代行の伊藤敬吾さん。商品の仕入れからオリジナルグッズの制作、サンドイッチやおにぎりなどのメニュー開発まですべて手がける。

「まあ、これだけ個性ある商品のなかでも、人気商品はいたって普通のハムエッグとかたまごサラダとか、カツサンドなんですけどね(笑)。変わり種でいうと『チャーハン ギョウザ Bセット』はけっこう売れています」

変わり種サンドイッチにはこんなエピソードも。

「何年か前にお客さんから、『甘いのとか旬のものはないの?』って聞かれたんです。それがちょうど春ぐらいだったんですけど、春っていったら筍とか山菜かあ、甘いものは何がいいかなあ、なんて考えてたら、そういえばうちに『たけのこの里』があるなと思って(笑)。その流れで『きのこの山』でもつくったら今度は『アポロ』も挟んだらいいんじゃないかっていわれて、つくっちゃいました」

「おでん」「たこ焼き」をはさんだサンドイッチ
サンドイッチなのに「おでん」に「たこ焼き」。
チョコレートお菓子をはさんだサンドイッチ
「3月のオーストラリア」という商品名の由来がわかりますか? ほかに「きのこたけのこチョコ」に、「月へ行こう!」など、スイーツ(!?)部門。
中華料理をはさんだもの
人気は「チャーハン ギョウザ Bセット」。定食のような名前がいいですね。
「ミルクレープ」「イチゴ マンゴー あんこ」をサンドした商品
さらに甘いもの。「みたらし団子とウインナー」「ミルクレープ」「イチゴ マンゴー あんこ」。

そもそもなぜ、サンドイッチのメニューはこのような突き抜けた変化を遂げたのでしょうか。

「20年以上前になりますかね。近くにいわゆる大手コンビニチェーンができて、売り上げが一時がくんと落ちてしまって。それで、お客さんが来るのをただ待っているだけじゃダメだと思って、僕が調理師免許をとって手づくりのお弁当や食品づくりを始めたんです」

そこから数年後、お店のSNSを開設した敬吾さんがサンドイッチの変わり種メニューを投稿したところ、次々と拡散されていき瞬く間に話題に(ちなみに第1弾は「ベビースターラーメン」だったそう)。

どこまでも自由な発想から生み出される商品を眺めていると、立山サンダーバードにおける「食」とは、エンターテインメントでありコミュニケーションでもあるということを実感。

「ここまでいろんなメニューができたのは、前にやっていたお弁当づくりのおかげかもしれません。それにうちではお菓子とかも売っているので、とりあえずいろんなものを挟んでみよう! っていうのが僕の考えなんですけど、普通の感覚とはだいぶズレてるんだろうなあ。そこをおもしろがってくれる人たちがいてくれたおかげでやってこれたっていうのはありますね」

レジに座る敬吾さんの父で代表の代表の伊藤敬一さん
1996年に開業した〈立山サンダーバード〉。レジ前には駄菓子、後ろにはタバコのパッケージが並び、懐かしい商店の雰囲気。
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