木彫りのまち・井波にひらかれた宿
〈Bed and Craft〉で、
在原みゆ紀が体験する3つのこと | Page 2
feature|PRIVATE DOORS「在原みゆ紀が旅する南砺。民藝・クラフトトリップ」
つくり手の世界観を空間全体に表現した
「一棟一職人」のギャラリーのような宿
Bed and Craft(以下、BnC)は、南砺市に拠点を構える〈コラレアルチザンジャパン〉が運営する分散型のホテルです。
日本に古くから存在する「お抱え職人」文化を再興し、職人との新たな価値創造をコンセプトに掲げるクリエイティブ集団でもある同社。富山市出身の山川さんが井波を訪れた際に井波彫刻にふれ、木彫家の田中孝明さんと出会ったことがきっかけで、この「職人に弟子入りできる宿」が生まれました。
「井波には木彫をはじめ、さまざまなものづくりを行う作家がいます。なかでも彫刻師の割合は、人口8000人に対して約200人。現在BnCには6棟の宿がありますが、木彫や漆芸、陶芸、作庭など、棟ごとに異なる作家が手がけた作品を展示するギャラリーとしての機能も持っています」(白樫さん)
「このまちには、そんなにたくさんの作家さんや職人さんがいるんですね。私が泊まらせていただくお部屋がどんな空間なのか、とっても楽しみです」(在原さん)
在原さんが宿泊するのは、かつて格式の高い料亭だった「KIN-NAKA」。木彫家の前川大地さんが手がける空間には、天井の大きな木彫りのシャンデリアや和室の松竹梅をモチーフとした作品など、見どころがたくさんあります。
歴史を感じる建物や空間のディテール、工芸の美しさにふれながらも、清潔感のあるバスルームや使い勝手のいいキッチンなど快適性も兼ね備えています。
館内に展示されている作品は、それぞれの作家から提案されたものであり、宿泊者は購入することができるのだそう。さらには「マイギャラリー制度」という、宿泊料の一部を担当作家に還元する独自の制度があり、これによって作家の活動を支持するとともに、宿泊者とのつながりを生み出しています。
チェックイン:16:00〜21:00
※BnC LOUNGEにて。宿泊棟とフロントの場所が異なります。今回宿泊した部屋はKIN-NAKA
チェックアウト:11:00
料金(KIN-NAKA):19000円〜(1人あたり/朝食付) ※2名利用時の金額。子ども料金あり。
Web:Bed and Craft
〈nomi〉で味わう創作イタリアンと
木くずを活用してつくる燻製料理
BnCでは料理の楽しみ方もいろいろ。近隣には提携しているレストランもあり、フレンチなら〈ランソレイエ〉、お部屋でゆっくりと日本料理を愉しむなら井波の会席料理店〈旬菜しふく〉のコースもあります。今回は夕食付きプランでの予約のため、創作イタリアンと燻製料理がいただける〈nomi〉へ。
nomiのメインシェフを務めるのは江澤哲さん。メニューはフルコースのほかスターターというショートコースもあり、今回はスターターとアラカルトを組み合わせるかたちに。前菜は季節果実のパテドカンパーニュ、富山鮮魚のカルパッチョ、昆布締め野菜のバーニャカウダなど。旬の野菜と魚と肉がいずれもバランス良く構成されています。
「富山って、蟹やお魚のイメージが強かったんですけど、野菜もお肉もなんでもおいしいんですね」(在原さん)
このレストランでぜひ味わってみてほしいのが「燻製鍋」。定番のベーコンのほか、里芋や枝豆などの野菜、南砺卵に五箇山豆腐、昆布締めのホッケなど、地のものが凝縮された燻製の盛り合わせです。
「お部屋にあった、燻製ポテトチップスもすごくおいしかったです。食べ応えがしっかりあって病みつきになりそうな味でした」(在原さん)
燻製のチップには木彫の過程で出る木くずを活用しており、木彫りのまちの職人とレストランが生み出す小さな循環を垣間見ることができます。
BnCに宿泊するなら、朝食付きプランをおすすめします。フレッシュな野菜と季節の果物にヨーグルト、あたたかいスープ、井波で人気店のパン屋〈baker’s house KUBOTA〉のパン、そしてコーヒーをのんびりと味わう朝は、なんとも至福のひとときです。
「初めて富山を訪れて、なかでも井波というエリアでは、古いものの魅力はもちろん、それを残そうとする人たちの情熱を感じました。職人の方やまちに暮らす人とふれ合ったことで、自分にとっての富山のイメージがくっきりしてきたような気もします。地域の歴史もまちの風景も、人がつくるものなんだとあらためて実感しました」(在原さん)
人の手から生まれるものには、昔も今も変わらない魅力があります。歴史をつくるのは人、と在原さんが語るように、これまで受け継がれてきた日本の伝統文化や技術にはひとつひとつ物語があるのです。まちを歩きながら、ものづくりの気配を感じてみませんか。
ファッションモデル。1998年生まれ、千葉県出身。メンズウェアをバランスよく取り入れたオリジナルな着こなしや明るく自然体な人柄が支持され男女問わずにファンを持つ。男性誌、女性誌、広告やブランドディレクションなど幅広く出演依頼が舞い込み、最近は国内にとどまらず韓国でも活動中。Instagram|@ariharamiyuki
credit text:井上春香 photo:松木宏祐 hair & make:ボヨン styling:中井彩乃