四季折々の旬の魚を食べ逃さないための「富山のすしカレンダー」では、日本各地を飛び回るすし作家・岡田大介さんによる、3つのすしネタを食べ頃ポイントとともにお届けします。多種多様でおいしい魚が獲れる富山湾。今がまさに旬のクロマグロ、岩ガキ、トヤマエビをご紹介します。
7月のすしネタ①|クロマグロ
食べ頃ポイント:富山のマグロは生マグロ
ひとくちにマグロといっても、クロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、ビンナガ、メバチ…と、さまざまなマグロが流通しています。その中でも、圧倒的な旨みで人々を魅了し続けているのがクロマグロです。
「富山でマグロ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、クロマグロも水揚げされています。先述のマグロの多くは世界中の海で捕獲され、冷凍流通しているものがほとんどですが、富山湾でとれるクロマグロはもちろん生マグロ!
その赤色の鮮やかさは誰が見ても「美しい…」とため息が漏れてしまうほど。そして、見た目を超えてくる濃厚な旨みは、酢飯と合わさることでメインディッシュへと昇華します。
すしになるために存在しているのではないかと思えるほど、酢飯と相性の良いクロマグロ。赤身、中トロ、大トロ、みなさんはどの部位がお好みですか? 初夏の富山で生のクロマグロの握りずしをぜひご堪能ください!
7月のすしネタ②|岩ガキ
食べ頃ポイント:大きくても決して大味にならない
「岩ガキって、普通の牡蠣と何が違うの?」そう思われる方も少なくないのではないでしょうか? もちろん、牡蠣は牡蠣なのですが、全く別物と思っていただいていいと思っています。
一般的に流通しているものの多くが「マガキ」という種類なのですが、岩ガキは「イワガキ」という種類なんです。まず、マガキとはおいしい季節が違います。牡蠣といえば冬においしいイメージがあると思いますが、夏に抜群においしくなるのが岩ガキです。
そして、マガキと圧倒的に異なるのがそのサイズ。岩ガキはマガキの4、5倍くらいのサイズになることも。殻の大きさもさることながら、中の身の大きさに驚かされるはず。
一口で食べることが難しいほど大きな岩ガキが夏の富山では楽しむことができます。岩ガキを一つ食べたときの満足感といったら、牡蠣何個分も食べたときのような感覚。
濃厚なミルキーさもレベル違いなので、五感が追いつきません。そして、岩ガキはおすしにすると合うの?合わないの? と気になるところですが、これもまた抜群に合うんです。ぜひ富山のおすし屋さんで岩ガキをみつけたら、おすしにしてもらってみてください。きっと職人さんが大きな岩ガキで握ってくれますよ。
7月のすしネタ③|トヤマエビ
食べ頃ポイント:富山を名乗るには理由がある!
ボタンエビとして流通されることが多いトヤマエビ。名前に富山が付いてしまうほど、実は富山の特産物のひとつだったりします。伊勢エビの伊勢は、県名ではないですし、チバエビとか、カゴシマエビなど聞いたこともないですよね。標準和名自体から「富山!」が全面に出ているエビがトヤマエビです。
シロエビやアマエビと同列にされがちですが、それらよりもさらに甘みを強く感じやすいのは、トヤマエビの大きさも関係しているかもしれません。
1匹まるごと使用されたトヤマエビの握りずしを、口に入れたのなら、舌に触れるたびに甘く、脳の「うまいセンサー」がビンビン反応して、口内いっぱいに広がる幸せ。酢飯の酸味とトヤマエビの濃厚な甘み。そこに醤油が加わることで完璧に整う。これが、すしという食べものの素晴らしさだと実感させられます。
トヤマエビのすしを食べられた幸運なあなたには、さらにボーナスが! トヤマエビの頭で出汁をとったお味噌汁もきっとそこにあるでしょう。身の甘み、頭や殻からいただく旨み、トヤマエビの全てをあなたのものにしてください。
1979年生まれ。すし職人歴27年。東京都文京区にてすし屋「酢飯屋(すめしや)」を経営する。現在は海、魚、すし、海藻にまつわる様々な情報を伝える「すし作家」として活動中。ディープなブログとSNSで発信し続け、料理人の新しい働き方を、体を張って日々探し続ける。著書に『すし本 海から上がって酢飯にのるまで』(大和書房)など。Web|酢飯屋 Instagram|@okadadaisuke_sumeshiya
credit text:岡田大介 edit:花沢亜衣
参考文献:『すし本 海から上がって酢飯にのるまで』(大和書房)